STPをベースに事業戦略を考えよう

地方中小企業がSTPで生まれ変わる──想いを“伝わるコンセプト”に変える販売戦略の実践事例

※この記事はオンラインサロンの内容を元に作成しています。

地方都市で事業を展開する中小企業や個人事業主にとって、「想いをどう形にし、誰に届けるか」は永遠の課題です。情熱だけでは顧客ニーズに届かず、明確なコンセプト設計とSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)に基づく販売戦略が求められます。本記事では、地域相談室「止まり木」の事例を通じて、ブランド戦略やペルソナ設計、ローカルマーケティングの実践法をひも解きます。

こんな方に読んで欲しい。
  • 中小企業や地域ビジネスの経営幹部・マネージャー層
    自社のブランド戦略や販売戦略を見直したい方。理念や想いをどう伝えるかに課題を感じ、STP分析やコンセプト設計を実務で活かしたいと考えている人。
  • 新規事業や商品企画を担当するマーケティング担当者
    新しいサービスをどう差別化し、社内外に伝えるかを模索している方。ペルソナ設計や価値提案、共感マーケティングなどを学びたい人。
  • WEB業界を目指す学生・転職希望者
    STP理論やローカルマーケティングを実例で理解したい方。企画や広告制作など、戦略思考を必要とする仕事を志す人。
なぜあなたの事業は魅力が伝わらないのか?

地方中小企業の“伝わらない”問題──想いと市場ニーズのギャップ

地方都市で事業を営む中小企業やNPOでは、熱い想いを持ちながらも「顧客に届かない」「地域で認知されない」という悩みを抱えるケースが少なくありません。
良い商品や支援活動を展開していても、情報発信が感覚的・属人的になり、市場の構造や顧客ニーズに基づいた事業企画が不十分なまま進んでしまうのです。

「伝わらない理由」は単純ではありません。
デザインやコピーライティングの問題だけでなく、誰に・何を・どう伝えるかという販売戦略の設計不足が本質的な原因となっています。
このギャップを埋める鍵となるのが、マーケティングの基礎理論である**STP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)**です。


情熱だけでは伝わらない――“想い先行型”の発信が抱えるリスク

多くの地方企業は、経営者の理念や地域貢献の精神を大切にしています。
しかし、「社会のために」「地域のために」という抽象的な言葉だけでは、誰のどんな課題を解決するのかが伝わりにくく、結果として共感を得にくい構造になっています。

実際に「止まり木」のパンフレット改善プロジェクトでも、利用者にとって無料なのかどうかが曖昧で、対象年齢層も不明確でした。
このように、情報が整理されていない状態では、ブランド戦略が成立せず、顧客が行動を起こす前に離脱してしまいます。

また、地方では口コミや紹介などの人的ネットワークに依存するケースが多く、マーケティング戦略全体を体系的に設計している企業はまだ少数派です。
その結果、「理念はあるが、価値提案が弱い」「顧客セグメントが曖昧」「コンセプトが社内外で共有されない」という課題が生まれます。


STP思考で“伝える構造”を設計する

このような課題を解消するには、感情的な発信から一歩進んで、理論と構造に基づくコミュニケーション設計が必要です。
特にSTP分析を導入することで、以下のように情報を整理できます。

  • Segmentation(市場細分化):地域・年代・ニーズなどで市場を区分する

  • Targeting(狙う顧客層の決定):どの層に最も価値を届けたいのかを明確化する

  • Positioning(価値の打ち出し方):他社や他団体との違いを明確にし、共感と信頼を得る軸をつくる

これらを整理することで、単なる広告ではなく「事業全体のコンセプトメイキング」が可能になります。
顧客の視点に立ったペルソナ設計を行い、ファクト(事実)とストーリー(想い)を両立させることが、伝わるブランド構築の第一歩です。


地方都市だからこそ求められる“戦略的共感”

都市部のように大量の広告予算を使えない地方企業こそ、共感マーケティング×戦略設計の融合が有効です。
地域密着型の活動では、“人柄”や“信頼感”が購買や支援の決め手になります。
そのため、単なる情緒的なメッセージではなく、**「誰のために、なぜこのサービスが存在するのか」**という論理的な裏付けを伴ったストーリー設計が欠かせません。

「止まり木」の取り組みは、まさにこの転換点を示しています。
理念を言葉にし、対象層を再定義し、協賛金の説明を改善することで、活動の信頼度と共感度が大きく高まりました。
地方企業も同様に、STPを軸にした**ブランド再設計(リブランディング)**を進めることで、限られたリソースでも強い発信力を持てるのです。

この項のまとめ

  • 想いだけでは伝わらない: 地方中小企業は理念や情熱を重視するあまり、顧客ニーズとのズレが生じやすい。発信内容を構造的に整理する必要がある。
  • 販売戦略の設計不足: 「誰に・何を・どう伝えるか」が明確でないと、ブランド戦略が機能せず、共感や行動につながらない。
  • STP分析の導入が鍵: セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを用いて市場と顧客を再定義し、戦略的なコンセプト設計を行うことが重要。
  • ペルソナ設計と価値提案: 顧客像を具体化し、ファクト(事実)とストーリー(想い)を両立させることで、伝わるブランドコミュニケーションが生まれる。
  • 地方だからこそ戦略的共感を: 大規模広告に頼らず、共感マーケティングと論理的ポジショニングを組み合わせることで、信頼と支持を獲得できる。

何を?でなく、誰にが最重要項目である

STP分析で見える「誰に」「何を」「どう伝えるか」──戦略的コンセプト設計の実践

中小企業や地域団体が持つ最大の課題は、「良いことをしているのに伝わらない」という構造的なギャップです。
それを乗り越える鍵となるのが、マーケティングの基本理論である**STP分析(Segmentation/Targeting/Positioning)**です。
このフレームワークを活用することで、曖昧だった“発信の方向性”を明確にし、**戦略的コンセプト設計(コンセプトメイキング)**を行うことができます。


S(セグメンテーション)──市場を正しく分けて理解する

「止まり木」の事例では、まず“誰が支援を必要としているのか”を整理するところから始まりました。
地域全体を一枚岩と捉えるのではなく、年齢層・社会状況・支援目的などで**市場を細分化(セグメンテーション)**したのです。

たとえば、不登校の子どもを持つ家庭、再就職に悩む成人、孤立を感じる高齢者など、支援対象は多様です。
これらを一括りにしてしまうと、メッセージの焦点がぼやけ、誰の心にも響かなくなります。
セグメンテーションによって、地域のどこにどんな課題が集中しているかを可視化することが、販売戦略や広報設計の第一歩となります。


T(ターゲティング)──誰に届けるべきかを明確にする

次に重要なのは、どの層に最も価値を届けたいのかを明確にすること。
「止まり木」では、初期のパンフレットでは学生中心の印象を与えていましたが、実際には成人や親世代の相談も多く、ターゲットの再定義が必要でした。

ターゲティングを正しく行うと、言葉の選び方・デザイン・配布場所まですべてが変わります。
たとえば、親世代を想定するなら、親子の安心感や信頼性を重視したブランド戦略が有効です。
また、協賛や寄付を考える企業に向けては、社会的意義や地域貢献を訴求する**価値提案(Value Proposition)**を明確にすることが重要です。

こうして「誰に伝えるのか」を定めることで、発信の軸がぶれず、ペルソナ設計を通じた効果的なコミュニケーションが可能になります。


P(ポジショニング)──“何をどう伝えるか”で差別化する

最後に、STPの核心であるポジショニングです。
ポジショニングとは、競合と比較して「自社(または団体)はどの立ち位置で価値を提供するのか」を定義すること。
「止まり木」では、行政や学校では対応しきれない個別相談に寄り添うという強みを明確化し、
“地域の最後の相談場所”という独自の立ち位置を打ち出しました。

このような明確なコンセプトは、単にパンフレットの内容を変えるだけでなく、組織の存在意義(ミッション・ビジョン)を再定義する効果もあります。
さらに、右脳(感情)と左脳(論理)の両方に訴えるコミュニケーション設計
を行うことで、
「共感」と「信頼」の両立を図ることができます。


STPを導入するメリットと応用可能性

STP分析の利点は、理論的に考えるだけでなく、実務への転用が容易な点にあります。
中小企業の新規事業やリブランディングでも、
・顧客セグメントを再定義する
・ペルソナに基づくメッセージ開発を行う
・自社の価値提案を再構築する
といった手順にそのまま応用できます。

「止まり木」のように地域に根ざした活動であっても、STP思考を導入することで“伝わる仕組み”を設計できるのです。
これは単なるマーケティング理論ではなく、中小企業が理念を実現し続けるための経営ツールでもあります。

この項のまとめ

  • STP分析は発信の方向性を明確にする: Segmentation・Targeting・Positioningを通じて、曖昧だった事業や広報の軸を整理し、戦略的コンセプト設計を可能にする。
  • セグメンテーションで市場を可視化: 地域・年齢・課題別に顧客セグメントを分けることで、誰のどんなニーズに応えるかを明確化し、販売戦略の基盤を整える。
  • ターゲティングで発信の焦点を絞る: 届けたい顧客層を明確にすることで、言葉・デザイン・チャネルの一貫性を高め、効果的なペルソナ設計と価値提案を実現する。
  • ポジショニングで差別化を生む: 競合や他団体との違いを定義し、独自の立ち位置を築くことで、ブランド戦略とミッション・ビジョンの再構築につながる。
  • STPは理論ではなく実務ツール: 新規事業企画やリブランディングなどにも応用できる実践的な手法であり、中小企業が理念を具体的な行動へと変えるための経営フレームとなる。

まずやってみるそれが大事だが、振り返りも同時にやっていこう!

想いを“戦略”に変える──地方から始めるローカルマーケティングの実践法

STP理論を整理し、発信の軸を定めたあとは、それを現場でどう実践するかが重要です。
特に地方都市の中小企業や地域団体においては、限られたリソースの中で最大限の効果を出すために、戦略的なローカルマーケティングが不可欠になります。
「止まり木」の事例は、単なるパンフレット改善にとどまらず、理念を“行動に変える仕組み”を構築したプロセスとして多くの示唆を与えてくれます。


地域に根ざした「信頼の設計」から始める

地方ビジネスにおいて最も重視されるのは、“誰が発信しているか”という信頼性の構築です。
都市部のように広告露出で認知を稼ぐのではなく、地域社会との関係性の中でブランドが形成されます。
そのため、まず行うべきは「信頼を設計する」こと。

「止まり木」では、協賛金の使途を明確化し、支援者リストや活動報告を定期的に公開しました。
これにより、ファクト(事実)とストーリー(想い)を両立させたコミュニケーション設計が実現。
情報の透明性を高めることで、協賛企業や地域住民からの信頼が強まりました。
地方の中小企業も同様に、理念を“データ化”することでブランドの一貫性を保てます。


デジタルシフトがもたらす発信力の拡張

従来、地方の事業はリアルなつながりに依存してきましたが、いまやデジタルシフトが不可避です。
SNS、オウンドメディア、Web広告などを通じて、地域の枠を越えた共感を獲得できます。

ここで重要なのは、「オンライン発信=都会的な広告」ではないということ。
むしろ、地域らしさを活かしたローカルブランディングを設計することで、温かみと信頼性のあるメッセージを発信できます。
たとえば、地域での活動を定期的に発信するブログや、事例を紹介するショート動画などは、ペルソナ設計に基づいた具体的な顧客像に届きやすい媒体です。

また、アクセス解析や反応率を基にしたKPI設定を行えば、限られた予算でもPDCAサイクルを回しやすくなります。
“勘と経験”ではなく、データに基づくマーケティング戦略が可能になるのです。


STP×ローカルマーケティングで生まれる新たな価値

STPの考え方をベースにローカルマーケティングを展開すると、「地方=不利」という固定観念が変わります。
地域に根ざした企業やNPOだからこそ、顔の見える関係性信頼に基づくブランド戦略を築けるのです。

たとえば、

  • Segmentation:地域特性に応じた市場区分(人口構成・文化・課題)

  • Targeting:地域の価値観に共鳴する層を選定(地元企業、支援者、家族層など)

  • Positioning:地域の中で「どんな存在でありたいか」を明文化

この3つを実践レベルで回すことで、単なる販促活動ではなく、地域に貢献しながら持続的に成長できるブランドが生まれます。
これは、地方中小企業における経営とマーケティングの融合点でもあります。


理念を行動へ──戦略的共感が地域を動かす

「止まり木」が教えてくれるのは、理念と戦略を両立させる力の重要性です。
STPで構築した理論をもとに、デジタル発信と地域活動を組み合わせることで、共感の輪が自然と広がっていきます。
つまり、マーケティングとは単なる販売手法ではなく、「想いを行動に変える社会的デザイン」なのです。

地方発のビジネスや支援活動こそ、この戦略的共感マーケティングを通じて、新しい価値を生み出すことができます。
小さな発信でも、構造化されたメッセージと一貫したブランド体験があれば、地域の外へも影響を及ぼせる。
STPを軸としたローカルマーケティングは、まさにその第一歩です。

この項のまとめ

  • 地域ビジネスの信頼構築が起点: 地方都市では広告よりも人とのつながりが重要。理念や活動をデータとファクトで可視化し、信頼性の高いブランドを設計する。
  • デジタルシフトで発信力を拡張: SNSやオウンドメディアを活用し、地域の枠を越えて共感を広げる。ローカルブランディングを意識した情報発信が効果的。
  • KPI設定による戦略的改善: アクセス解析や反応率などのデータを活用し、勘に頼らないマーケティングを実現。PDCAサイクルで継続的な改善を行う。
  • STP×ローカルマーケティングの融合: 地域特性を踏まえたセグメンテーション、価値観に基づくターゲティング、独自のポジショニングで差別化を図る。
  • 理念を行動に変える戦略的共感: STP思考と共感マーケティングを組み合わせることで、地方発でも持続可能で影響力のあるブランドを構築できる。

編集後記

情報を伝える仕事に携わりたい――そう思っても、最初は「何を、どう伝えればいいのか」で迷うものです。私自身も同じ壁にぶつかりました。大切なのは、完璧な発信よりも、想いを“伝わる形”に変えようとする姿勢です。小さな発信の積み重ねが、やがて人を動かす力になります。あなたの言葉にも、誰かを支える可能性が必ずあります。

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スケジュール

ボンセレ代表 伊藤祐介

講師紹介

株式会社ボンセレ 代表取締役
伊藤 祐介(いとう ゆうすけ)

 

❖ プロフィール

東京出身の“氷河期世代”。
身長182cm、見た目は大きめ、中身は細かめ。

公務員からスタートし、フレンチレストラン、築地魚河岸、ワインショップなど、業種も業界も超えて現場を経験。のちに広告代理店、EC支援、WEB制作へと軸足を移し、現在は複数企業のWEB戦略を支援。実務と現場視点に根ざした教育者です。


❖ 専門領域

  • WEBマーケティング/EC戦略立案

  • コンテンツ企画・制作

  • 広告運用(SNS/検索)

  • 顧客接点の設計とCRM支援


❖ 教育観・講義スタンス

「右腕は、育てることができる」。
人は“経験”だけでは変わりません。
変化するのは、思考のプロセスを鍛えたとき。

私は現場から、企画・広告・制作・接客・分析まで、すべての工程を実践してきました。だからこそ、「考えて動ける右腕」を育てるには、手を動かし、振り返り、問い直す場が必要だと考えています。


❖ 右腕育成にかける思い

「社長の想いを言語化し、現場に翻訳する存在」が右腕です。
単なるWEB人材ではなく、“経営を理解し、支える人材”を育てたい
ひとつの強みを見つけ、自分にしかできない貢献の形を築く――
それが、このプログラムのゴールです。


❖ 私のルーツ

  • 仮説実験授業(板倉聖宣 提唱)
     科学的な思考法とディスカッションベースの学びに影響を受ける。

  • プログラミングとの出会い
     高校時代にBasicからスタート。VBAでの業務改善からWEB制作へ。


❖ 好きなこと

食べること・飲むこと・考えること。
最近のブームは激辛料理(ブートジョロキア)。