
営業プレゼン資料の作り方|実例で学ぶ「伝わらない」を「伝わる」に変える構成の改善ポイント
※この記事はオンラインサロンの内容を元に作成しています。
「理念は伝わったけれど、結局何をしてくれるの?」——営業プレゼンでこんな反応を受けたことはありませんか?どれだけ優れた提案書を用意しても、顧客視点で「わかりやすい」構成になっていなければ、成約には結びつきません。本記事では、実際の営業資料作成の失敗事例をもとに、中小企業の幹部が押さえるべきプレゼンテンプレートの改善ポイントを解説します。伝わる営業資料のコツを、具体的なフィードバックとともにお届けします。
- 営業プレゼンで「理念は伝わるが具体性に欠ける」と指摘された経験のある中小企業幹部
- 媒体資料や提案書の構成に課題を感じており、成約率向上を目指す新規事業担当者
- 顧客視点でわかりやすい営業資料のテンプレートと改善ポイントを学びたい経営層・管理職

目次
なぜ営業プレゼンは失敗するのか?左官業界DX事例に学ぶ3つの落とし穴
「結局、何屋さんなの?」顧客の率直な疑問が暴いた営業課題
「理念は素晴らしいと思います。でも、結局何をしてくれるサービスなのか分からなくて…」
左官業界向けWebプラットフォーム「壁ダン」の営業責任者Y.Kさんが、実際の顧客を想定したロールプレイングで受けた、この率直なフィードバック。丁寧に業界の課題を説明し、デジタル変革のビジョンを熱く語ったにもかかわらず、肝心の「何をする会社なのか」が伝わらなかったのです。
この失敗事例は、中小企業の営業現場で頻繁に起きている典型的な問題を浮き彫りにしています。特に新規事業や革新的なサービスを提案する際、経営者や営業担当者は自社の理念や市場課題の分析には熱心ですが、顧客視点での「わかりやすさ」を見落としがちです。
提案書の構成が練られていても、営業資料のデザインが洗練されていても、相手に「伝わる」ことがなければ、すべての努力は水の泡となります。
なぜ熱意あるプレゼンが空回りするのか
Y.Kさんのケースでは、約50分にわたるプレゼンテーションが行われました。左官業界の構造的課題、職人の高齢化、若手への技術継承の困難さ——業界分析は的確で、データも用意されていました。そして最後に、壁ダンというプラットフォームがどのように問題解決に貢献できるかを説明しました。
しかし、顧客役を務めた春花さんからは、こんな反応が返ってきたのです。
「お話が上手なので、すんなり入ってきました。でも、何屋さんなのかがあまり分からないまま終わってしまって。企業ページを作ってくれる会社なのか、Web運営の会社なのか、判断できませんでした」
この失敗の本質は、「説明の順序」にあります。営業プレゼンにおいて、理念や業界課題から入るのは悪いことではありません。しかし、相手が最も知りたい「あなたの会社は私に何をしてくれるのか」という核心的な問いへの回答が後回しになってしまうと、聞き手は迷子になってしまうのです。
中小企業の営業現場に共通する3つの構造的欠陥
今回の事例分析から、多くの中小企業が抱える営業資料の課題が明確になりました。
第一の落とし穴:サービス内容の曖昧さ 「壁ダンは何をしてくれるのか」が最後まで明確に伝わらなかった問題です。Webサイト制作なのか、マッチングプラットフォームなのか、コンサルティングなのか——聞き手が分類できない状態は、不安と混乱を生みます。
第二の落とし穴:プレゼンテーション構成の混乱 目次や全体像の提示がなく、「どこまでお話が続くんだろう、いつ本題が来るんだろう」と聞き手が感じてしまう構成です。理念→業界課題→サービス概要→料金体系という流れは論理的に見えますが、顧客が求める情報の優先順位とは必ずしも一致しません。
第三の落とし穴:データの根拠不足 月間ページビュー数やユーザー層の数値を提示したものの、「何をもとにした数字なのか」「いつ調べた情報なのか」という出典や調査時期の説明が欠けていました。データは説得力を高めますが、根拠が不明確だと逆に信頼性を損なう結果となります。
これら3つの落とし穴は、Y.Kさんの事例に限らず、多くの中小企業の営業現場で日常的に発生している課題です。次のセクションでは、それぞれの問題をさらに深掘りし、なぜこうした失敗が起きるのか、その構造的な原因を解明していきます。
この項のまとめ
- 優れた理念やビジョンを語っても、「何をしてくれる会社なのか」が明確でなければ営業プレゼンは失敗に終わる
- 説明の順序が顧客視点と乖離していると、熱意ある提案ほど空回りし、聞き手を迷子にさせてしまう
- 第一の落とし穴:サービス内容が曖昧で、聞き手が自社のビジネスモデルを分類・理解できない状態を生む
- 第二の落とし穴:目次や全体像の提示がない構成では、「いつ本題が来るのか」と聞き手を不安にさせる
- 第三の落とし穴:データの出典や調査時期が不明確だと、数字は説得力ではなく不信感を生む要因となる

伝わらない営業資料の構造的欠陥:顧客視点で見る改善ポイント
「何屋さん?」の疑問が生まれる根本原因
営業プレゼンで最も致命的なのは、顧客が「結局、あなたの会社は何をしてくれるのか」を理解できないまま終わることです。Y.Kさんの事例では、春花さんから「企業ページ制作サービスなのか、Web運営会社なのか判断できない」という率直なフィードバックがありました。
この問題の本質は、提案者が「自分たちの価値」を明確に定義できていない点にあります。壁ダンというサービスのMVP(Minimum Viable Product:最小限の価値提案)は何なのか——この問いに即答できなければ、どれだけ丁寧に説明しても相手の頭の中で情報が整理されません。
伊藤氏のフィードバックでも指摘されたように、「価値の高い仕事を創出する」というのが壁ダンの核心的価値です。Webサイトはあくまで手段であり、目的ではありません。しかし営業トークでは、手段と目的が混在し、聞き手を混乱させていました。
中小企業の営業資料でよく見られるのが、この「手段の説明に終始し、価値提案が曖昧になる」パターンです。「当社はWebサイトを制作します」ではなく、「御社の価値ある仕事を顧客に届けるための見せ方を設計します」——この違いが、伝わる営業資料と伝わらない営業資料を分けるのです。
プレゼン構成の「聞き手ファースト」が欠如している
春花さんは「どこまでお話が続くんだろう、いつ本題が来るんだろうと感じた」と振り返りました。これは多くのビジネスプレゼンテーションに共通する構造的欠陥です。
提案書やプレゼン資料のテンプレートでは、「背景→課題→解決策→実績→料金」という流れが定番とされています。論理的には正しい構成ですが、顧客視点では必ずしも最適ではありません。
聞き手が最も知りたいのは「私の課題を解決してくれるのか」「具体的に何をしてくれるのか」という点です。この核心的な問いへの回答を後回しにすると、前段の説明がどれだけ丁寧でも、聞き手の集中力は持続しません。
わかりやすいプレゼンの構成とは、冒頭で「目次」と「ゴール」を明示し、聞き手に見通しを与えることです。「本日は3つのポイントについて、15分でお話しします」という一言があるだけで、聞き手の不安は大幅に軽減されます。
さらに重要なのは、最も重要な「何をするサービスか」を最初に提示するコツです。理念や業界背景の説明は、相手が興味を持った後に深掘りすればよいのです。この順序の逆転が、成約率を大きく左右します。
データが「信頼」ではなく「疑念」を生む瞬間
「月間5万PV」「ユーザーの70%が40代以上」——数字は営業資料に説得力を与える強力なツールです。しかし、Y.Kさんのプレゼンでは、このデータが逆効果となりました。
春花さんは「何をもとにした何の数字なんだろう」「いつ頃調べた数字なのか」と疑問を抱きました。データの出典、調査方法、時期が不明確だったため、数字が信頼性を高めるどころか、不信感を生む結果となったのです。
中小企業の営業現場では、「とりあえず数字を入れておけば説得力が増す」という誤解が広がっています。しかし、根拠のないデータは、プレゼン全体の信頼性を損なう危険な要素です。
効果的なデータ活用のポイントは、「透明性」にあります。「2024年10月の自社調査による」「Google Analyticsの直近3ヶ月のデータ」といった具体的な出典を添えるだけで、同じ数字の説得力は劇的に変わります。
また、データの「見せ方」も重要です。単に数字を羅列するのではなく、「なぜその数字が顧客にとって意味があるのか」を解説する必要があります。「月間5万PVということは、御社のページを見る潜在顧客が毎日約1,600人いるということです」——このように顧客のベネフィットに翻訳することで、データは真の説得力を持ちます。
今回の3つの問題点は、いずれも「提供者視点」と「顧客視点」のズレから生じています。次のセクションでは、このズレを解消し、成約率を高める具体的な改善策とテンプレートを提示します。
この項のまとめ
- 伝わらない営業資料の根本原因は、サービスのMVP(最小限の価値提案)が明確でなく、手段と目的が混在している点にある
- 「背景→課題→解決策」という論理的な構成は、顧客が最も知りたい「何をしてくれるのか」を後回しにし、聞き手を疲弊させる
- わかりやすいプレゼンには冒頭での「目次」と「ゴール」の明示が不可欠で、見通しを与えることで聞き手の不安を軽減できる
- 根拠不明なデータは説得力ではなく不信感を生む——出典、調査方法、時期を明記する透明性が信頼を構築する
- 数字は顧客のベネフィットに翻訳してこそ意味を持つ——「なぜその数字があなたにとって重要か」を解説する見せ方が重要

成約率を高める営業資料の作り方:プロが教える構成の黄金ルール
最初の30秒で「何屋さん」を明確にする技術
伊藤氏が指摘した最も重要なポイントは、「MVPを明確にする」ことでした。壁ダンの場合、それは「価値の高い仕事を創出すること」です。Webサイトはあくまで手段であり、目的ではありません。
成約率の高い営業プレゼンは、冒頭30秒で自社の核心的価値を端的に伝えます。テンプレートとしては、以下の構成が効果的です。
「私たちは〇〇業界の△△様に、□□という価値を提供する会社です」
この一文で、業界(誰に)、価値(何を)、手段(どうやって)が明確になります。壁ダンの例なら、「私たちは左官業者様に、御社の技術力を必要とする顧客とつなぐ仕組みを提供する会社です」となります。
「Webサイト制作会社です」と言ってしまうと、「うちはWebよくわからないし」と興味を失う顧客が出てしまいます。しかし「価値ある仕事を創出する会社です」と伝えれば、すべての事業者が関心を持つのです。
この「価値ファースト」のアプローチこそが、伝わる営業資料の第一原則です。提案書の冒頭ページ、プレゼンの最初のスライドで、この核心的価値を明示することが、成功への第一歩となります。
目的・目標・手段を分離する構成テンプレート
伊藤氏は「目的と目標、手段や方法に対する言及がぐちゃぐちゃで曖昧」と指摘しました。これは多くの中小企業の営業資料に共通する構造的欠陥です。
わかりやすいプレゼンを作るコツは、以下の3層構造を明確に分離することです。
【目的層】なぜ存在するのか 壁ダンの例:「左官職人の技術を正当に評価される仕事につなげる」
【目標層】何を達成するのか 壁ダンの例:「年間100件の高単価案件マッチングを実現」
【手段層】どうやって実現するのか 壁ダンの例:「企業の特色を活かしたWebページとSEO対策」
この3層を営業資料の構成に落とし込むと、聞き手の理解度が劇的に向上します。多くの失敗事例では、手段の説明に時間をかけすぎて、目的と目標が曖昧になっています。顧客視点では、目的への共感が最優先であり、手段の詳細は二の次なのです。
提案書のテンプレートとしては、「目的(1ページ)→目標(1ページ)→手段(2-3ページ)→実績(1ページ)→料金(1ページ)」という配分が理想的です。
「失注しない理由」を語る差別化戦略
伊藤氏からの重要なフィードバックとして、「失注の言及は不要。なぜ失注しないかにフォーカスすべき」という指摘がありました。
多くの営業担当者は、競合との違いを説明する際に「他社では失注が多いですが」と否定的な表現を使いがちです。しかし、これは顧客に不安を与えるだけで、自社の強みを効果的に伝えられません。
壁ダンの場合、差別化ポイントは「企業の特色を活かしたページ作成に注力している」という点です。一括見積もりサイトのような価格競争の場ではなく、各企業の独自性を引き出すことで、質の高いマッチングを実現しています。
この「失注しない理由」を営業資料で伝えるコツは、具体的な事例とデータを組み合わせることです。「当社経由の案件は、初回面談後の成約率が85%です(2024年度実績)。これは、事前に企業様の強みを丁寧にヒアリングし、それを顧客に響く見せ方で表現しているためです」——このような説明が、説得力のある差別化となります。
成約率を高める営業資料とは、顧客が「この会社なら自分の課題を解決してくれる」と確信できる構成になっているものです。理念や技術の説明ではなく、顧客のベネフィットを中心に組み立てられた提案書こそが、真に伝わる営業ツールとなるのです。
この項のまとめ
- 成約率の高い営業プレゼンは冒頭30秒で核心的価値を明示する——「何屋さん」を即答できる構成が成功の鍵
- 「価値ファースト」のアプローチで手段ではなく目的を語ることで、すべての顧客が関心を持つ提案書になる
- 目的・目標・手段の3層構造を明確に分離したテンプレートが、わかりやすいプレゼン資料の基本設計となる
- 「失注する理由」ではなく「失注しない理由」を語る差別化戦略が、顧客に安心と説得力を与える
- 具体的な事例とデータを組み合わせて自社の強みを証明することで、顧客が「この会社なら解決してくれる」と確信できる営業資料が完成する
編集後記
営業プレゼンで「伝わらない」経験は、誰もが通る道です。特にWEB業界を目指す方や新規事業に挑む方なら、Y.Kさんと同じもどかしさを感じたことがあるはずです。「理念は素晴らしいのに、具体性が伝わらない」——この壁にぶつかるのは、あなたが真剣に顧客と向き合っている証拠です。失敗は成長の種。率直なフィードバックを受け入れ、改善を重ねることで、必ず伝わる営業力が身につきます。あなたは一人ではありません。

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講師紹介
株式会社ボンセレ 代表取締役
伊藤 祐介(いとう ゆうすけ)
❖ プロフィール
東京出身の“氷河期世代”。
身長182cm、見た目は大きめ、中身は細かめ。
公務員からスタートし、フレンチレストラン、築地魚河岸、ワインショップなど、業種も業界も超えて現場を経験。のちに広告代理店、EC支援、WEB制作へと軸足を移し、現在は複数企業のWEB戦略を支援。実務と現場視点に根ざした教育者です。
❖ 専門領域
WEBマーケティング/EC戦略立案
コンテンツ企画・制作
広告運用(SNS/検索)
顧客接点の設計とCRM支援
❖ 教育観・講義スタンス
「右腕は、育てることができる」。
人は“経験”だけでは変わりません。
変化するのは、思考のプロセスを鍛えたとき。
私は現場から、企画・広告・制作・接客・分析まで、すべての工程を実践してきました。だからこそ、「考えて動ける右腕」を育てるには、手を動かし、振り返り、問い直す場が必要だと考えています。
❖ 右腕育成にかける思い
「社長の想いを言語化し、現場に翻訳する存在」が右腕です。
単なるWEB人材ではなく、“経営を理解し、支える人材”を育てたい。
ひとつの強みを見つけ、自分にしかできない貢献の形を築く――
それが、このプログラムのゴールです。
❖ 私のルーツ
仮説実験授業(板倉聖宣 提唱)
科学的な思考法とディスカッションベースの学びに影響を受ける。プログラミングとの出会い
高校時代にBasicからスタート。VBAでの業務改善からWEB制作へ。
❖ 好きなこと
食べること・飲むこと・考えること。
最近のブームは激辛料理(ブートジョロキア)。
