各社課題に向き合う。買取店の越境ECの可能性を考察する。

円安が進む中、多くの中小企業経営者が「外貨を稼ぐ」という新たな挑戦を模索しています。本事例は、買取店とリペア事業を営むH.R氏が越境ECへの参入を検討する過程で浮かび上がった課題と、その解決に向けたディスカッションを記録したものです。障害者協働という独自の価値提案を持ちながらも、プラットフォーム選択や戦略構築に悩む姿は、多くの経営者が直面する現実的な課題を映し出しています。

こんな方に見て欲しい

1. 越境EC参入を検討中の中小企業経営者
国内市場の縮小や円安を背景に、海外販売を検討している経営者。プラットフォーム選択や戦略構築の参考として活用いただけます。

2. 既存事業の海外展開を模索するリペア・リユース業界関係者
中古品やリペア品の海外販売における法的制約や市場性について、実践的な知見を求めている事業者に有用です。

3. 社会的価値と収益性の両立を目指すソーシャルビジネス経営者
障害者雇用などの社会的価値をビジネスモデルに組み込み、それを海外市場でどう活かすかを考えている経営者に参考となります。

1. 相談の背景

H.Rさんは現在、買取店事業でメルカリとヤフオクを活用した販売を行っているが、円安進行により外貨獲得の必要性を感じている。障害者の方々との協働によるリペア事業も手がけており、越境ECへの展開可能性を模索している。一方で、eBayでのクレジットカード申請経験はあるものの、本格的な越境EC参入には知識不足を感じており、具体的な戦略構築を求めている状況にある。

2. 相談の要点整理


 

事業現状

  • 買取店事業をメルカリ・ヤフオクで展開
  • 障害者の方々と協働したリペア事業を実施
  • eBayでの販売経験あり

課題認識

  • 円安進行に伴う外貨獲得の必要性
  • 国内市場の将来的な縮小への懸念
  • 越境ECに関する知識・経験不足

求めるもの

  • 越境EC参入の具体的戦略
  • 適切なプラットフォーム選択
  • 独自ドメインとモール型の使い分け

3. 問題点の抽出


問題点1:プラットフォーム理解の不足

H.R氏はeBayを越境ECカートとして認識していたが、実際にはオークション・モール系サイトであることを理解していなかった。越境EC用カートシステム(Shopify、LiveCart等)と既存のマーケットプレイス(eBay、Amazon等)の違いや特性を正確に把握できていない状況が見受けられる。

問題点2:商品特性に応じた販売戦略の未整理

現在扱っている商品(ブランド品、リペア品)が独自ドメインとモール型のどちらに適しているかの判断基準が不明確。特に、障害者協働によるリペア事業のブランディング価値を活かした独自ドメイン展開の可能性について、具体的な戦略が構築されていない。

問題点3:法務・物流面の制約への認識不足

越境ECにおける輸出規制、検疫制限、税務処理等の法的制約について十分な理解がない。特に中古衣類などの取り扱い商品に関する各国の輸入規制や、送料を考慮した価格設定戦略についての検討が不十分である。

弊社からのフィードバック

H.R氏の事業には大きな可能性を感じています。障害者協働というユニークなストーリーは、海外市場でも十分に差別化要因となり得ます。まずは商品特性を整理し、モール型での市場テストを行いながら、独自ブランディングを活かした独自ドメイン展開を段階的に進めると良いのではないでしょうか。法務面の制約は事前調査で回避可能ですし、アジア市場の成長を考えると今が参入の好機です。一歩ずつ着実に進めていく事で将来が見えてくる予感がします。

超高齢化と超円安の時代に沿う事業は越境EC

越境ECを始めるべき理由と成功のための基本要素

伊藤:それではリクエスト頂いた、越境ECの現時点のお話になります。ショッピファイのプロジェクトにもう2年ちょっと関わってるんですけども、そこまで僕も本格的に越境EC、輸出のネットショップをやってるわけではないので、調べた情報というところでお伝えできればなと思います。
伊藤:ポイント4つあります。取り組むべき理由と有利となる要素、それから具体的にどんなツールがあるか、そもそもブログツールとECってどこが違うの?っていうところはお伝えしたほうがいいかなと思いました。
伊藤:取り組むべき理由。日本は今GDP3位にありますけれども、外貨を稼がなきゃいけないよっていう時代が来るんですね。超高齢化社会で経済が減速し、円安が進みますから、海外の商品って高くて買えないよねっていう時代がもう多分そこまで来てるんですね。
伊藤:それを回避するために輸出事業を小規模でもやって、景気のいい国に物を売ることで生活を安定させるっていうところが、特に若い世代の方にとっては重要かなというふうに思います。
伊藤:実は2020年代はアジア時代と言われていて、その次来るのが2040年、アフリカの時代が来ると言われています。なので今2024年なので、あと16年はアジアの時代です。
伊藤:具体的にどんなもんかというと、中間層の消費は2030年までに10兆円増えると言われています。世界の中間層の消費の57%がアジアで消費されるということが試算されています。
伊藤:GDPですね。これ現在のランキングですね。2位が中国、3位が日本で、7位がインドで、16位インドネシア。特にインドとインドネシアはこの後また伸びるんですね。インドネシアの人口っていうのは実は3億人現在いるので、日本の2倍以上いるわけですね。
伊藤:この辺りの国外の環境、ファンダメンタルというんでしょうかね。その辺りもきちんと意識しながらビジネスを作っていくと面白いかなと思います。
伊藤:ではどんな要素がキーになるのかっていうところを整理してみました。輸出事業なので一つが送料、もう一つが法律・税務関係ですね。
伊藤:送料に関して言うとですね、実は80サイズの箱で送ると、沖縄まで送るのに2070円かかるわけですね。ではアジアの主要都市に関してはどうでしょうか。さっきAIに調べさせました。意外と変わんないですね。そんな変わんないですよね。
伊藤:なのでそこの送料を逆算してみました。2700円。日本みたいに中間層から低所得じゃなくて、格差社会によって持ってる人は本当に持ってるんですね。2700円の送料なんか全然払うよみたいなところは結構あったりするわけです。
伊藤:ECのデータ上でいくとですね、送料っていうのはだいたい全体の売上げの10%程度と言われています。まあ商品取扱いによっては上がったり下がったりするんですけど、だとするとですね、一商品単価が3万円ぐらいのものだったら、ああ平気で買うよっていう人がアジアにゴロゴロしてるわけですね。
伊藤:ここはぜひトライした方がいいかなと思います。何を売って3万円価値を得るのかなっていうところは充分検討してみてください。
伊藤:もう一個法律の問題があります。割とですねNGが多いもの。なんでこんな情報知ってるかっていうと、元々、僕は若い時に郵便局員だったわけです。それで海外に物を送りたいよっていうときに、何入ってますかってお客さんに聞いて、こんな分厚い辞書みたいな本があるんですけど、それ見るわけですね。送り先はセイシェル諸島ですか、とかグアドループですかとか、本を見てですね、これは送れませんねみたいなのを窓口でやっていたわけです。
伊藤:NGが多いものは種とか植物。これやっぱ検疫の関係で厳しいんですね。あとは一部の軍事に利用できるような電子機器。これはかなりNGの可能性が、もう税関の段階で止められて送れませんよっていうことが多いですね。
伊藤:中には調査必要なものがあります。個別に調査した方がいいよっていうところがあって、H.Rさんからお話があった中古の衣類もやっぱりですね、ノミとかダニとか運んでしまう可能性があるので制限があるわけです。
伊藤:あくまでAIに調べさせた結果ですけど、こんな感じです。基本的に輸入ダメよっていうのが中国本土、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン。ただ消費税かかるよとか税金かかるよとか、数量に上限あるけれど、オッケーなところが香港、韓国、シンガポール、ベトナム、台湾あたりですね。
伊藤:こんな物を売りたいんだって言っても、そもそもダメよっていう内容なのか、っていうところは事前に調べてからトライした方がいいですね。
伊藤:4つ目、じゃあどんなカートを使ったらいいのかっていうところになりますけども、メインどころをちょっとピックアップしました。
伊藤:1つ目はShopifyですね。カナダの会社で急成長。この2、3年で大きくしています。Amazonでもともと売ってたけどShopifyに変えましたみたいな方がかなり多いですね。ただしアプリで細かく課金される傾向があるんで、すごく安くていいかとかっていうと必ずしもそうではないし、独自のLiquidというファイル管理システムを使っているので、それを覚える必要があるわけですね。
伊藤:それからLiveCart。これはアジア系に強いカートですよというふうに言われています。それからLiveCommerce、英語、日本語、中国語などに対応しています。
伊藤:それからMagento。比較的安いツールではあるんですけども、カスタマーサポートは弱めと言われています。
伊藤:それからCS-Cart。割と古くからあってですね、特徴としては買い切り。他のものはやっぱサブスク、月額いくらっていうところではあるんですけども、買い切りのプランがあるよということになるかなと思います。
伊藤:Shopify以外はちょっといじったことないんで、内容はあんまりわからないんで、興味ある方は個別にご自身で調べてください。
Y.K:1つここでいいですか?H.Rさん、クレジットカードを申請したのは何でしたっけ?
H.R:eBayです。
Y.K:この中にはeBayはないですね。越境ECとしてはeBayが日本で多いのかなと思ったけど、これは意図して外したわけですか?
伊藤:eBayに関しては厳密に言うともともとはオークションのサイトとしてスタートしてるっていうところと、感覚的にはAmazonに出品するのと変わりないんですね。なので今回はあえて除外しました。
H.R:わかりました。どうもすみません。
伊藤:モール系の感じでもいいよねっていうことであれば、AmazonでもeBayでもいいかなとは思いますけども、やっぱりマージンが一定数取られるっていうデメリットがありつつ、閲覧のチャンスはそれでもあるので、例えば入口商品だけそっちで展開して、本命の方は独自の方で売るみたいな戦略もできるかなと思います。

この項のまとめ

  • 日本経済の縮小や円安進行により、外貨を稼ぐ手段として越境ECの重要性が増している
  • アジアの中間層が急拡大し、2030年までに世界の中間層消費の57%を占めると試算されている
  • 送料はアジア主要都市でも比較的安く、3万円前後の商品なら売れる可能性が高い
  • 植物や中古衣類など、国や品目によって輸出制限があるため、事前調査が不可欠
  • Shopifyを筆頭に、LiveCartやMagentoなど様々なECカートがあり、用途に応じて選定が必要

ECサイトとCMSの違いは何?長所と短所がある

ブログツールとECサイトの違いと使い分け戦略

伊藤:はい、ではそもそもブログツールとECって何が違うのって言うんですけど、CMSコンテンツマネジメントシステム、ワードプレスとか他にもいろいろありますけれども、コンテンツを作り出して管理するシステムですね。そういうのに強いという特徴と、比較的プラグイン(アプリ)が多いので、ギャラリーつけたりとかフォームつけたりとか直ぐに出来て、自由度が高いわけですね。でも、お金回り決済回りの機能は非常に弱かったりするわけです。
伊藤:反対にECの方は、モール型もあったりとか独自ドメイン型もあったりして、どちらも一長一短ではあります。ちなみにH.Rさんの新サイトはエビスっていうことなので、多分エビスマートを使ってくださいねみたいな感じのおすすめになるとは思います。営業マンから提案があるかも、僕はちょっと使ったことないんで分かんないですけど、この中だと一回もいじったことないのはエビスマートです。他はちょろちょろはあります。
伊藤:ECサイトのメリットは、決済回りが強い、安全性が高いということですね。あとは選択肢も多いっていうことなので、やっぱりお金回りにトラブルがあると膨大な時間取られるんで、だったら月額費を払っちゃった方がいいよねっていうことになるかなと思います。
伊藤:反対にSEOいまいちだし、アプリも選択肢少ないので、魅力的で面白いページ作る機能はないですね。じゃあ一長一短の中、どういう作戦があるかっていうと、このECのカート機能だけワードプレスに埋め込むみたいな形も取れるので、そういった形で面白いページ、SEO強いページ作りながら決済機能の安全性を担保するみたいなところは増えていますね。
伊藤:いま壁紙の販売サイトのお手伝いをしてますけども、そちらも僕の提案でワードプレス + ショッピファイという形で、サイトの運営をしていったりしています。以上がECの情報になりますが、何かご興味持った部分とかありますか。
伊藤:ECで外貨が稼げると良いですよね。
H.R:欲しいですね。
伊藤:円よりもドルの方が安全性が高いから、円安の政策が間違いだって言ってる人がいますね。労働力がそもそもない状況で値下げしてもメリットは何にもないって言ってる方がいるんで、いまやってる政府の政策はかなり失敗なんじゃないかという話はニュースでやっていました。
伊藤:ECの部分はこれぐらいにして、具体的にご相談があればまた調べ直したりということになるかなと思います。
Y.K:ECサイトは独自ドメインで作れるもので、モール型にeBayとかが入ってくるんですよね。
伊藤:そうですね。
伊藤:非常にいい質問だと思います。結論から言うと両方やったほうがいいです。次回以降でちょっとやろうかなと思ったんですけど、独自ドメインでやらないほうがいい商品ってあるんですね。そこを見誤ってしまうとめちゃくちゃ険しい戦いになる。なので商品を振り分けて、これはモールでもやるよね、独自ドメインでしかやらないものとかを振り分けてやったほうがいいんですね。
伊藤:モール店は売れるけど利益が減ってしまうわけです。販売手数料にかなり取られてしまうので利益が少なくなってしまうんですけど、お客さんがなにか欲しいものないかな、ってサイトを回遊しているので、売れるチャンスは多いですね。先ほど申し上げた通り、入口の商品だけモール店で展開しておいて、実はもっといいものは独自ドメインのほうにありますよっていうやり方がベターかなと思います。
Y.K:独自ドメインはブログみたいに長期性のイメージですか。
伊藤:そうですね。具体的に言うと、ブランディングがすでに確立していて頻繁検索されるような商品が一つ、もう一つが完全に他では買えないオリジナル商品、この二つしか売れないって言われてるんです。
Y.K:直接商品を検索しに来るようなもの。
伊藤:そうです。
伊藤:例えばH.Rさんがケリーバッグが欲しいなと思ったら、Y.Kさんに買ってもらえばいいと思うんですけど(笑)。そうでない場合は品番を検索するじゃないですか。欲しい色のケリーバッグの品番があると思って、そうすると楽天とかアマゾンでも探すけども、Googleでも探したときに上位のほうに来て、この店どうやら信頼できそうねっていう。品番とか商品名で調べてこないような、ニーズが曖昧な商品は独自ドメインには向いてないですね。なぜなら説明に時間がかかるから。なので結論を言うと、独自ドメインは商品によっては時間がかかるよってなるかなと思います。
Y.K:両方走らせて実験してみるのが最初はいいかもしれないっていう感じってことですか。
伊藤:そうですね。両方出してみて、全然独自ドメインで売れるじゃんってことがもし分かれば、モール店のほうは引っ込めちゃえばいい。なぜなら薄利だから。
H.R:今のを買取店の売ってるのがメルカリとヤフオクだからモールになるんですけど、商品的に全部変わっていくからあれだけど、逆に障害者の方とやってるっていうことのブランディングですごい確立ができてしまえばそっちで、その方たちがリペアしているものを求めるみたいな独自ドメインでやってももしかしたらいけるかもしれないみたいなイメージですか。
伊藤:そうですね。要は他の付加価値がありますかっていうところで、結局品番検索するようなブランド品が売れたとしても利益にはなるけども、その商品が好きなんであって我々のファンにはならないわけですよ。ただ売上げとか利益の面ではそれは非常に重要、要は客寄せパンダみたいなものが必要ではあるんです。2番目の方のオリジナル商品っていうのは、我々自体に価値を感じてくれて購入してくれる方なので、そもそもその2つしか売れないよっていうところなんですけど、微妙にやっぱりお客さんの属性は違うわけです。うまく使い分けて、もしその後者の我々のファンの人が増えてくれば、その2つだけで無限に商売展開して成立するよねって話になると。どうですか、面白かったですか。
H.R:面白かったです。ちゃんとメモしました。Search ConsoleとGA4のキーワードプランナー、Looker StudioとUberSuggestです。これちょっとまた夜な夜な検索して中身を見てみたいなと思います。
伊藤:そうですね。H.RさんもY.Kさんも、空き家をやりたいねっていうのがもともと前にあったので、そこについてお二人で僕も含めてディスカッションするといいかもしれないですね。そうすると共通のテーマで深い議論ができると。
H.R:はい。ありがとうございました。
Y.K:ありがとうございました。

この項のまとめ

  • ブログツール(CMS)はコンテンツ作成・管理が得意で自由度が高いが、決済機能は弱い
  • ECサイトは決済や安全性に優れ、月額費用を払うことで運営の安定性が得られる
  • SEOやページデザインに優れるCMSとECを組み合わせる「ハイブリッド型」運用も増加中
  • モール型は集客力が高く入口商品向き、独自ドメインはブランディングやオリジナル商品に有効
  • 商品特性や顧客層に応じて販売チャネルを使い分けることで、越境ECの成功率が高まる

編集後記

如何でしょうか? 本記事では、買取店が越境ECに挑む意義と、その可能性について深掘りしてきました。国内の経済的な制約や円安といった要因を逆手に取り、アジアの中間層市場へアプローチすることは、もはや一部の先進企業だけの選択肢ではありません。むしろ、ストーリー性や社会性を帯びたブランドが、世界中の誰かの心を動かす時代が到来しています。 「安く仕入れて高く売る」だけでは届かない価値──それを届けられるのは、想いや背景を丁寧に編み込んだ商品だけなのかもしれません。リスクを恐れず、小さくても確かな一歩を。未来の顧客は、今ここにいないかもしれませんが、あなたの準備を待っているかもしれません。越境ECという広大な海原へ、風を捉えた航海が始まりますように。

メタ思考のグリア WEBマーケティングが身に付くオンライン勉強会

メタ思考のグリアに参加しませんか?

毎月第三火曜日に開催!無料枠はどなたでも参加できます。
[無料枠] 17:00~17:30 [有料枠] 17:30~18:30

次回の開催

日時:2025年08月19日(火)17時~
開催方法:オンライン開催(ZOOM)
テーマ:AIの現在地を知る。

メタ思考のグリア、詳細はこちら

お問い合わせ

お問い合わせは フォーム から。
有料会員の申請は右記の 専用ページ からお申込み下さい。

スケジュール