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Webスキルは人を変える──たった3ヶ月で新人がEC店長に育った話
最近よく、「人材開発ってどう進めたらいいですか?」という相談を受けるんです。特に今は、AIやDXが進んで、育てる側も学ぶ側も、どこから手をつければいいのか分からないという声が増えてきました。
でも僕は、どんなに時代が変わっても、人が育つ根っこってそんなに変わらないと思っていて──今日は、僕がまだ勤め人だったころ、ひとりの第2新卒の社員を育てたときの話をしようと思います。Webの仕事が人をどう変えるのか。そして育成の初期に本当に大切なことは何か。それを少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
Webスキルが人材開発に効く理由とは?

今日は「WEB界隈は人材開発の教科書だ」というテーマでお話をお聞きしたいと思います。まず、Webのスキルが人材開発にどう役立つか、実例を交えてお聞かせください。

ウェブを学んでいくということが、いかに人材開発、人材育成にとって役に立つかということにおいて、過去の事例を紹介していきたいと思います。ちょっと昔の話なので、今のDXであるとか、AIというものが出てくる前の話ではあるんですけれども、十分役に立つ話、人事や人材育成を考える上では非常に重要な話になってくるかなと思いますし、今後はさらに、AIやDXがよりウェイトが大きくなっていくと思うんですね。そういう意味では、過去の事例ではあるけれども、よりウェブを学んでいくということの重要性というのは増しているかなと思います。

なるほど、では具体的にはどのような事例があったのでしょうか?

これは私がまだ勤め人だったときの話になります。ある時期ですね、営業部からですね、一人面倒見てほしいという話がありました。なんで急遽その人が異動してきたのか?第2新卒で入ってきた人で、入社3ヶ月とかそれぐらいのタイミングだったんですね。もういらないからそっちで面倒見てくれっていう話だったんですね。第2新卒って何ぞやっていう話だったんですね、当時はまだ。僕もそういうものに馴染みがなかったので。それで、どうも話を聞くと、ミスが多くて、重要なお客さんに対して、言ってはいけない事、やれない事をやれますと言ってしまったらしいんですね。それが大事になって、上司と社長の激励に触れて、私の部署にオファーが回ってきたという経緯があります。

それは大変でしたね。まさに問題を抱えた人材を引き受けることになったんですね。その方のスキルレベルはいかがでしたか?

どんな人かというとですね、ExcelとかWordがギリギリ使える程度のスキルですね。当然、HTMLやCSS、javascriptのようなWebに必要なスキルはまるで持ち合わせていません。VLOOKUPも僕が教えたぐらい程度の、Excelも中級までいかない、初心者クラスのスキルでした。それで、僕が何を感じて、何から伝えていったかというとですね、特に異動したばかりの時は、営業部の残務があったので、そちらを半分やってほしいという依頼が有った、だから半分は営業部の残務、それから私がいた部署ですね。WebのメディアとEC部門で半々というような状況でスタートしました。
この項のまとめ
Webスキルで育つ!人材開発の成功法則

技術的にはまさにゼロからのスタートだったんですね。どのような環境づくりから始められたのでしょうか?

その若いスタッフの中で、何が起きてきたかっていうところを初見で分析をしたんですね。これは、その彼女だけではなくて若い方全般に言えることだと思うんですけれども、いろんな人からいろんなことを言われると、社会人経験が少ないということもあるんですけれども、どんどん混乱していくんですね。その状況をまず脱しようということで営業部の残務に関してもそうですし、Webのチームメンバーに関しても、彼女に直接指示を出さないでくださいということをお伝えして、それを厳守していただきました。つまり何か彼女に依頼事項があるときは必ず私を通してくださいということを、そういう仕組みに変えていったんですね。

なるほど、情報を一元化されたんですね。なぜそのような判断をされたのでしょうか?

最初の時点で、何が大切かというとですね、これWebというのは間口も広いんですね。デザインの領域があったりとか、ライティングもありますし、プログラミングもある。間口が広くて、かつ奥行き一つ一つもですね、極めようとするとかなり時間や経験が必要だったりするんですね。膨大な領域があるということなんです。だから、重要なことは、初期にはいいとこ取りをしないということが非常に重要なんですね。つまり、一人の師匠について徹底的にそれを真似るということが「学ぶ」という点において重要だなというふうに、私自身も過去の経験から実感しています。なのでですね、必ず私を通してくださいといった背景には、そういった私自身の経験があったということになります。

Web業界の特性を活かした育成方法ですね。

先ほども申し上げた通り、Web業務って膨大な領域があるんですね。だからこそ、自分の中でこれ得意かもとか、好きかもっていうところが必ず見つかるんですね。それがWeb業務全般の良いところだと思います。最近よく人材の中で言われているのが、仕事の中でエフィカシーをいかに高めていけるかっていうことですね。つまり、なんとなく得意かもっていうところ、これって好きだなっていうところ。これ、重要なポイントは他人と比較してではなくて自分の中でっていうことですね。つまり、その行為や作業自体を楽しんでいけるかっていうことが非常に重要なんですけれども。Webは膨大な間口があるし、しかも奥行きがあるので、楽しみながら自分の好きを見つけて、エフィカシーを高めていけるということが、私の経験の中で実感しています。

自己効力感を育てる環境として、Webは最適だったということですね。具体的にはどのような業務から始められたのでしょうか?

とはいえですね、いきなり難しいことってできないし、難しいことって脳にもメンタルにもストレスがかかること。まあストレスがかかることは必ずしもネガティブではない、そのストレスによって成長のチャンスが生まれてくると思います。しかしですね、初期にやっぱりあんまり難しすぎると心が折れてしまうということも事実だと思います。なので、私は彼女には最初にお願いしたのは、ECの商品登録と受注の処理というところからスタートしたんです。

段階的に負荷をかけていく設計をされたんですね。その後はどのように進んでいったのでしょうか?

その後はですね、ウェブの基本的な技術であるHTML、CSS(スタイルシート)であるとか、あるいはPhotoshopの使い方なども伝えてきました。最終的にはですね、WEBデザインをしたり、メールマガジンを書いてもらったりとかも覚えていただいて、ウェブやECの仕事がものすごく楽しいというふうに言ってくれるようになりました。で、3ヶ月ぐらい私の部署に移動してから経った時にですね、ECの店長になるぐらいのスキルに達成したんですね。たった3ヶ月で。

3ヶ月で店長レベルまで!それは素晴らしい成長ですね。

この話にはですね、オチがありまして、その3ヶ月ぐらい経ったタイミングで、彼女の社内の評価がものすごく高くなったんですね。元いた営業部のマネージャーにこういうことを言われました。「彼女を戻してほしい」と。こっちはですね、本当に、彼女が混乱している状況を打開してですね、ようやく戦力化できたのに戻してくれと、何を言っとんだ、ふざけんなというふうに言い返してやりました。

それは皮肉な結果ですね。この経験から、どのような学びを得られましたか?

特に初期ですね、人材育成、人材開発の初期において、一番重要なのは僕は情報の取り方だと思っています。今日はその話をしたということになるかなと思います。で、エラーが起きる時っていうのは、これヒューマンエラーの考え方ですけれども、認知・判断・行動・情動の順で起きるんですね。ほとんどのエラーは認知のフェーズで起きているので、そこをいかに潰していけるかっていうところが、上司の役目なのかなというふうに思います。

認知の段階でのエラー防止が重要なんですね。他にもWeb業界特有の人材開発メリットはありますか?

それからもう一つ重要な点はですね、結果が可視化できるっていうことなんですね。その取り組みに対して成果があったのか、相関関係があったのかっていうところを見つけやすいんですね。これはウェブならではかなと思います。これがWEBでなくリアルの営業だったりすると、割とそこの検証っていうのは難しいんですけども、ウェブでやると結果が可視化できるので、それは自分で内省して、フィードバックしてもいいですし、周りからフィードバックを受けやすい状況がある。この点においても人材開発に非常に有利なツールになってくると考えています。

結果の可視化によってフィードバックが受けやすくなるというのは、確かにWeb業界の大きな特徴ですね。今日は貴重なお話をありがとうございました。
この項のまとめ
編集後記
Webの世界はとにかく「膨大な領域」があります。だからこそ、その中で「これ、ちょっと好きかも」という“好き”が見つけやすい。そしてその“好き”は、出来る(Can)につながり、やがて「やりたい(Want)」へと発展していく可能性を秘めています。
さらに重要なのが、Webの「始めやすさ」です。他の専門分野だと、資格や初期投資が必要だったりする一方で、Webは誰でも気軽に触れられる。自分でブログを書いたり、簡単なWebページを作るところから始められます。
そして、Web最大の特徴のひとつが「結果が可視化されること」。自分の取り組みがアクセス数や売上、反応などで目に見える形で返ってくるからこそ、自分で成長を実感しやすい。これは育成する側からしても非常にありがたいことですし、本人にとってもフィードバックを受けやすく、自走のきっかけになりやすい。
だからこそ、Webは人材育成において非常に有効な“教科書”になると、僕は思っています。

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