
「AIで作成」何となく良さそうで終わっていませんか?時間を溶かす前に読むべき記事
※この記事はオンラインサロンの内容を元に作成しています。
AIを使えば、誰でも一晩でWEBやツールなど、新しいサービスのプロトタイプを形にできる時代になった。面白がって作ること自体は何も悪くない。しかし、その完成度に疑問符を付けず「良さそうだ」と感じ、また、企画そのものを検証せず突き進んでしまうと、結果はツールの出来栄えとは無関係に、最初からコケているプロジェクトになる。本記事では、社長・役員がこの「企画の検証」をどう行い、人材育成にどう活かしていくかを解説する。
こんな方に見て欲しい
- 中小企業の社長・経営者 AIを活用した新規事業やサービスの企画が社内から上がってきた際に、それを「好感」だけで採用すべきか見極める判断軸を持ちたい方。
- 役員・事業責任者 部下の企画提案を評価する立場にあり、企画の質を高めるための具体的な問いかけ方を学びたい方。
- 経営幹部・人事責任者 AI時代において、社員の企画力・現場感覚・専門性をどう育成し、組織に蓄積していくべきか考えたい方。
目次
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なぜ「ツールの完成度」と「企画の成否」は無関係なのか
新規事業の相談でよく見かける光景がある。AIを使って一晩で作ったツールやサービスのプロトタイプを持ってきて、「こんなものができました」と嬉しそうに報告してくる。面白がってツールを作ること自体は、何も悪いことではない。むしろ、スピード感を持って試作できるのは大きな強みだ。
問題は、その完成度の高さを見て、経営者・役員側が「これは良さそうだ」と感じ、そのまま話が前に進んでしまうことにある。
AIが生み出すツールは、本質的に”平均値”だ。無数のデータから、最も典型的で無難な形を作り出す。だから誰が見ても「悪くない」と感じる、見栄えの良いものができあがる。しかし、事業として成立するかどうかを決めるのは「好感」ではない。ある特定の顧客が「これがないと困る」「是が非でも手に入れたい」と感じる、根源的な欲求に触れているかどうかだ。
ここで見落としてはいけないのは、ツールの出来栄えと、企画(誰に・何を・いつ・どこで)の検証は、まったく別の問題だということだ。実際、新規事業の9割は、ツールが形になった時点ではなく、その手前の企画の段階で、すでに勝敗が決まっている。どれだけ完成度の高いツールを作っても、企画が曖昧なままなら、結果は変わらない。
経営者がまず持つべきは、ツールの完成度に惑わされず、「この企画は、誰のどんな状況に、どう刺さるのか」を問う視点である。次の章では、その具体的な問い「誰に・何を・いつ・どこで」を紹介する。
3点まとめ
- AIでツールを面白がって作ること自体は問題ない。スピード感のある試作は強み
- 問題は、ツールの完成度に「好感」を覚え、企画(誰に・何を・いつ・どこで)の検証をスキップしてしまうこと
- 新規事業の9割は、ツールが形になる手前の「企画の段階」で既に勝敗が決まっている

伊藤のコメント
最近、AIで作ったツールを持って「こんなのできました」と相談に来る方が、本当に増えました。行動力があるのは良いことです。でも、その見た目や機能の良さに満足して、企画の検証をすっ飛ばしてしまう方が多い。聞くべきは一つだけです。「それ、誰が泣いて喜ぶんですか?」。ツールの出来に着目しすぎなのです。

部下の企画を通す前に問うべき「誰に・何を・いつ・どこで」
前章で見た「好感」と「根源的な欲求」の違いを、実際の企画の場でどう見極めるか。その答えが、「誰に・何を・いつ・どこで」という4つの問いだ。重要なのは、この4つを順番通りに、かつ具体的に答えられるかどうかである。
まず「誰に」。「中小企業の経営者向け」「30代の働く女性向け」といったターゲット設定は、一見正しそうに見えるが、これでは解像度が低すぎる。1%マーケティングの考え方では、50人になんとなく使われる商品より、100人に1人に深く刺さる商品を目指すべきとされる。「誰に」が曖昧なペルソナのままでは、誰の心にも深く刺さらない。
特に経営者が注目すべきは「いつ」だ。同じ顧客でも、平常時と、何らかのトラブルや変化に直面している時とでは、抱えているペインポイントの強さが全く違う。「いつ」を具体的に書けるかどうかが、「好感」と「是が非でも」を分ける分岐点になる。
「何を」「どこで」も同様に、抽象的な機能の説明ではなく、その瞬間にその人が何を求め、どこでその情報に触れるのかまで書く。この4つの空欄が具体的に埋まらない企画は、まだアイデアではなく思いつきの段階であり、ニッチ戦略としても成立しない。
3点まとめ
- 「誰に・何を・いつ・どこで」を、順番通り・具体的に答えられるかが企画の質を測る最初の関門
- 「誰に」が曖昧なペルソナでは、1%マーケティングが目指す「100人に1人に刺さる」状態には到達しない
- 特に「いつ」が鍵。顧客のペインポイントが強まる局面を具体化できるかが、好感と根源的欲求の分岐点

伊藤のコメント
「誰に」って聞くと、みんな「中小企業の社長」とか「主婦」とか言うんですけど、それじゃ何も決まってないんですよ。同じ社長でも、絶好調の時と、資金繰りが厳しい時とでは欲しいものが全然違う。部下の企画を通す前に、「それ、いつの、誰の話?」って聞いてみてください。そこで答えが止まったら、まだまともな企画になってないということです。

「半径3メートル調査」をやらせることが、現場感覚を持つ人材を育てる
「誰に・何を・いつ・どこで」を紙に書き出せたら、次にやるべきは大規模な市場調査ではない。まず、自分の身の回り——半径3メートルにいる人に、その仮説をぶつけてみることだ。
家族、同僚、取引先の知人。誰でも構わない。重要なのは、紙に書いた「この状況のこの人なら、これを是が非でも欲しがるはずだ」という仮説を、実際の人間にぶつけて反応を確かめる経験そのものだ。AIが出してきた企画書がどれだけ整っていても、生身の人間に話したときの反応とは、まったく別物である。
この半径3メートル調査は、単なる需要の検証手法としてだけでなく、人材育成の場としても機能する。特に若手や中堅社員にとって、机上で考えた仮説が、現場の人間の反応によって簡単に崩れる、あるいは思わぬ角度から刺さるという経験は、何よりの学びになる。顧客インタビューという言葉を使うと身構えてしまう社員も、「まず3人に話してきて」という小さな一歩であれば動きやすい。
経営者の役割は、この小さな仮説検証のサイクルを、社内で当たり前の習慣として根付かせることにある。
3点まとめ
- 紙に書いた仮説は、まず半径3メートル——身近な人にぶつけて反応を確かめる
- AIの企画書では得られない「生身の人間の反応」こそが、最初の需要検証になる
- 半径3メートル調査は需要検証だけでなく、若手・中堅社員の現場感覚を育てるOJTにもなる

伊藤のコメント
大規模な市場調査は、最初やる必要ないんです。まずは奥さんとか、近所の人とか、3人くらいに話してみる。それだけで、自分の仮説がどれくらいズレてるかってすぐ分かります。これを社員にやらせると、面白いですよ。自信満々で持ってきた企画が、3人に話した瞬間にボロボロになる。でもそれが一番の勉強なんです。

いきなり本命を任せない — 小さな入口商品で「成功体験」を積ませる
半径3メートル調査で仮説の方向性が見えてきたとしても、そこからすぐに本命の商品・サービスを売り出すのは早計だ。どれだけ精度の高い仮説であっても、最初から大きな商品をぶつければ、顧客は身構えてしまう。必要なのは、本命の前に置く「入口商品」だ。
入口商品の役割は、顧客との最初の接点を軽いハードルで作ることにある。無料の相談、お試し版、期間限定のサービスなど、形は何でも構わない。重要なのは、顧客が「これくらいなら試してみよう」と思える小ささであることだ。いきなり本命を売ろうとする企画ほど、実は「誰に・いつ」の解像度が低いまま進んでいることが多い。
この考え方は、新規事業だけでなく、社員育成にもそのまま当てはまる。経営者は、見込みのある若手にいきなり大きなプロジェクトの全責任を任せたくなる。しかし、それは新規事業でいきなり本命商品を売るのと同じ無理筋だ。まずは小さく完結する役割を任せ、そこで成功体験を積ませる。小さな成功の積み重ねが、本命を任せられる人材を育てる。
入口商品の設計とは、顧客のためだけのものではない。社員が安心して挑戦し、失敗から学べる「小さな舞台」を用意することでもある。
3点まとめ
- 仮説の精度が高くても、最初から本命商品を売るのは失敗の元。まず軽いハードルの「入口商品」を用意する
- いきなり本命を売ろうとする企画ほど、「誰に・いつ」の解像度が低いまま進んでいることが多い
- 入口商品の発想は社員育成にも応用できる。小さく完結する役割を任せ、成功体験を積ませることが、本命を任せられる人材を育てる

伊藤のコメント
新規事業でも人材育成でも、みんな最初から大きいものを任せたがるんですよ。でもそれ、いきなり本命を売ろうとしてるのと同じです。社員にも、まず小さく成功させる場を作ってあげる。そこで「できた」っていう感覚を持てた人は、次の大きい仕事でも踏み出せるんです。

AIに代替されない「専門性」を、組織にどう蓄積していくか
「今、市場に存在しないサービスだから、参入のチャンスだ」という発想には注意が必要だ。存在しないのは、単にニーズがないか、あるいは提供するコストが見合わないからかもしれない。AIによってツールやサービスの”形”は誰でも簡単に作れるようになった今、この見極めはより重要になっている。誰でも作れるものは、誰にとっても差別化にならないからだ。
では、何が本当の差別化になるのか。それは、AIには代替できない「専門性」そのものである。長年の実務経験から得た判断軸、顧客の状況を見極める感覚、業界特有の事情への理解——これらは、AIが平均値として出してくる答えとは対極にある、固有の価値だ。
ここまで紹介した「誰に・何を・いつ・どこで」を問う習慣、半径3メートル調査、入口商品による小さな成功体験。これらはすべて、社員一人ひとりの中に専門性を蓄積させていくための仕組みでもある。経営者の本当の仕事は、AIで作れるものを追いかけることではなく、社内に蓄積された専門性が何かを見極め、それを次の世代に継承していく仕組みを作ることにある。
3点まとめ
- 「市場に存在しない=チャンス」ではなく、「存在しない理由」を見極める視点が必要。AI時代はその重要性が増している
- AIには代替できない「専門性」こそが、本当の差別化要素になる
- 経営者の役割は、4Wの習慣・半径3メートル調査・入口商品の仕組みを通じて、社内に専門性を蓄積し継承していくこと

伊藤のコメント
AIが出してくるアイデアって、結局「誰でも思いつくこと」なんですよ。本当に需要があって、誰でも思いつくくらいの話なら、もう誰かがやってるはずなんです。それでも市場に無いとしたら、「需要が無い」か「コストが合わない」かのどちらか。AIに勧められたからチャンスだ、じゃなくて、「これだけ簡単に思いつくのに、なぜ無いんだろう」って、無い理由の方を先に疑ってみてください。
編集後記
AIのおかげで、何かを始めるハードルは大きく下がりました。以前は形にするだけでお金も時間もかかったからこそ、自然と熟慮を重ねていたんです。でも、必要な思考のプロセス自体は何も変わっていません。簡単に作れるようになった今だからこそ、安易な思いつきをそのまま形にして、時間を溶かさないでほしい。WEB業界を目指す方も、同じ状況にいる方も、まずは紙とペンで考えることから始めてみてください。

講師紹介
株式会社ボンセレ 代表取締役
伊藤 祐介(いとう ゆうすけ)
❖ プロフィール
東京出身の“氷河期世代”。
身長182cm、見た目は大きめ、中身は細かめ。
公務員からスタートし、フレンチレストラン、築地魚河岸、ワインショップなど、業種も業界も超えて現場を経験。のちに広告代理店、EC支援、WEB制作へと軸足を移し、現在は複数企業のWEB戦略を支援。実務と現場視点に根ざした教育者です。
❖ 専門領域
WEBマーケティング/EC戦略立案
コンテンツ企画・制作
広告運用(SNS/検索)
顧客接点の設計とCRM支援
❖ 教育観・講義スタンス
「右腕は、育てることができる」。
人は“経験”だけでは変わりません。
変化するのは、思考のプロセスを鍛えたとき。
私は現場から、企画・広告・制作・接客・分析まで、すべての工程を実践してきました。だからこそ、「考えて動ける右腕」を育てるには、手を動かし、振り返り、問い直す場が必要だと考えています。
❖ 右腕育成にかける思い
「社長の想いを言語化し、現場に翻訳する存在」が右腕です。
単なるWEB人材ではなく、“経営を理解し、支える人材”を育てたい。
ひとつの強みを見つけ、自分にしかできない貢献の形を築く――
それが、このプログラムのゴールです。
❖ 私のルーツ
仮説実験授業(板倉聖宣 提唱)
科学的な思考法とディスカッションベースの学びに影響を受ける。プログラミングとの出会い
高校時代にBasicからスタート。VBAでの業務改善からWEB制作へ。
❖ 好きなこと
食べること・飲むこと・考えること。
最近のブームは激辛料理(ブートジョロキア)。
